10月の花
ススキ(古名をばな、かや)
わが背子(せこ)は 仮庵(かりほ)作らす 草(かや)なくは
小松が下の 草(かや)を刈らさね (中皇命 万葉集巻1-11)
各地の山野に多く群生する大形のイネ科の草本です。秋に茎の頂きに大きな花穂をつけます。この花穂ををばな(尾花)といい、秋の七草の一つに数えられています。また、この茎を刈って屋根をふくのに使われるので、刈屋根の意味でかやと呼ばれるといわれています。
オミナエシ(古名をみなへし)
女郎花(をみなへし) 咲きたる野辺を 行きめぐり
君を思ひ出 たもとほり来ぬ (大伴池主 万葉集巻17-3944)
日当たりの良い山野に生えるオミナエシ科の草本です。夏の終わりから秋にかけて、茎の上部で分枝し、粟粒状の黄色い花を多数つけます。秋の七草の一つです。
オケラ(古名 うけら)
恋しけは 袖も振らむを 武蔵野(むさしの)の
うけらが花の 色に出(づ)なゆめ (作者不詳 万葉集巻14-3376)
日当たりのよい山地の乾いた所に多いキク科の植物です。茎はかたくて円柱状、葉はかたく切れ込みの有る場合があります。秋には茎の頂に白色の花をつけ、周囲には針状の包状葉があります。長い根茎は乾燥しておき、煎じて飲むと胃腸病などによくきくといわれています。
ヨモギ(古名 よもぎ)
大君の………ほととぎす 来鳴く五月のあやめ草
よもぎかづらき 酒みつき……………(長歌 大伴家持 万葉集巻18-4116)
山野に最も普通なキク科の植物です。夏から秋にかけて茎の頂で分枝し、淡褐色の小形の花を穂のように多数つけます。春には新苗をとり草餅の材料にします。鮮やかな緑と独特の香りで春の味覚には欠かせないものです。葉の裏の綿毛はお灸(きゅう)のもぐさの原料にします。
ア シ(古名 あし)
若の浦に 潮満ち来れば 潟(かた)を無(な)み
葦辺(あしべ)をさして 鶴(たづ)鳴き渡る (山部赤人 巻6−919)
各地の池、沼,河岸などに普通に生える大形のイネ科の草本で、高さ2〜3mに達し、大群落をつくります。茎はかたく中空の円柱形で緑色をし滑らかで、枝分かれはありません。秋に茎の先に大形の円すいの花穂をだします。茎はあんでよしず(よしすだれ)を作るのに利用されます。